卵摘手術と卵巣子宮全摘術のお話。

2023.06.26

避妊手術をしたはずの猫が出産…術後に「卵巣」再生か なぜ?獣医師が注意喚起「100%避妊できる術式を」|まいどなニュース (maidonanews.jp)

現場の活動者様たちの身を削る努力によりようやく手術にこぎつけた野良猫が、リリース後に妊娠・・・あってはならない事態です。活動者様の落胆が目に浮かぶとともに、何より二度も開腹手術を受けることになった猫が不憫でなりません。

当院でも出張先で、「卵摘手術を受けた猫が発情している」との相談で手術済みの子の再手術を2回行ったことがあります。

1匹目は、左卵巣の摘出痕が他の内臓に重度に癒着しており、残念ながら再生した卵巣のすべてを取りきることはできませんでしたが、同じタイミングで残されていた子宮を全て摘出し、妊娠を防ぐことができました。

2匹目は、片方の卵巣は摘出されていましたが、もう片方は摘出した形跡すらなくそのまま残されているといった、何ともずさんな状態でした。

少し極端な事例の紹介ではありましたが、卵巣組織は一部でも体に残された場合、再生し、ホルモンを分泌し、そこに子宮があれば、妊娠できてしまいます。

熟練した獣医師が卵摘を行えば、「絶対大丈夫」なのでしょうか?

卵摘手術と子宮全摘手術の比較は以下の記事で紹介されています。

不妊手術の2つの方法 | やまがた不妊去勢クリニック (y-snc.com)

 

正直、私自身卵摘手術を経験したことがありません。ですので、どちらの術式が優れている、という論争ができる立場ではありませんが、記事にあるように、特に地域の過剰繁殖を抑制することを目的とした手術を主体的に行うスペイクリニックでは、卵巣/子宮摘出術で不妊化をより確実なものにするのが吉という考えを支持し、当院では飼い猫、保護猫、野良猫によらず、全てのメス猫に対し、卵巣子宮全摘出術を行っております。

今後、それぞれの術式を行う獣医師同士が有意義な議論を展開し、双方の技術が実情に即した形で発展していくことを願ってやみません。

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